ルミナリエ滞在記
前回の調査員ノートはこちらから。
――
こんばんは、ユンです。
今回は、少し前に行ったルミナリエ統合首都国での滞在を振り返ってみようと思います。
仕事としての調査ではあったけれど、あの街で過ごした日々はどこか「旅」に近かった気がします。
最初に驚いたのは、街の明るさでした。
昼も夜も関係なく、建物や道のあちこちが淡く光っている。
人工照明というよりは、街そのものが自分で光っているような感じです。
光が強すぎないから、目にも心にも優しい。
夜になっても影が消えないのは不思議だけれど、歩いていて落ち着くんです。
評議広場では、ちょうど「初光の式」という行事が行われていました。
人々が光票という小さな球を手に持って、それを空に放つ儀式です。
会場全体が金や青や白の光で包まれていて、とても静かできれいでした。
隣にいた小さな子が僕を見て「おにいちゃんの心、今、金色だね」と言って笑ったんです。
そんなふうに人の気持ちが光で見えるなんて、まだ信じられません。
でも、あの子の目には本当にそう見えていたんだと思います。
食事も印象に残りました。
《Re:Photon》というカフェで飲んだ発光エスプレッソは、見た目も味もびっくり。
カップの中で光がゆらゆら揺れて、飲むたびに香りが変わるんです。
苦みのあとに少し甘さがあって、どこか安心する味でした。
あと《オーロラ・サーモン》のグリル。これは本当に美味しかった。
皮がパリッとしていて、身は柔らかく、果物のような香りがある。
現地の人は「海の記憶を味わう料理」と呼ぶそうです。
少し大げさな表現に聞こえるけれど、食べてみると妙に納得しました。
夜は《ネオン魔導街》を歩きました。
屋台が並んでいて、夜光うどんとか、星屑ドーナツとか、変わった名前の食べ物がいっぱい。
それぞれがほんのり光っていて、歩いているだけでも楽しい。
途中で街の灯りが一瞬すべて消えるハプニングがあって、周囲の人たちは慌てるどころか「光が休んでるだけ」と笑っていました。
数分後、ゆっくり灯りが戻ると、空に“ありがとう”の文字が浮かび上がりました。
どうやら定期的に行われる演出の一つだったらしく、観光客向けのサプライズらしいです。
知らなかったので本気で驚きましたが、結果的にすごく印象に残っています。
滞在中に感じたのは、この国の人たちは光と一緒に生きているということ。
電気や魔法の道具としてではなく、もっと身近なもの――空気みたいに自然な存在なんです。
誰かの感情や思い出が街の灯りになる、という考え方も好きでした。
目に見えないものを大切にしている文化って、やっぱり強いと思います。
帰る前にお土産として《ルクナ・プリズムティー》を買いました。
注ぐ角度によって味が変わる発光紅茶で、見た目もきれい。
地球に戻ってから何度か飲んでいますが、あのときと同じ味にはならないですね。
たぶん、あの街の空気とか、人の気配とか、そういうものも全部“味”だったんだと思います。
ルミナリエは、華やかさの中に静けさがある国でした。
観光地というより、光そのものが生きているような場所。
次に行くときは、もう少しゆっくり滞在してみたいです。
今度は仕事じゃなくて、ちゃんとした“旅行”として。




【書:調査員ユン・ハイドラン】
次回の調査員ノートはこちら。
※追加され次第、リンクがつながります。

